川端康成・芥川龍之介・三島由紀夫・太宰治
ゆきぐに
雪国 · 1937 · 冒頭
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。
いずのおどりこ
伊豆の踊子 · 1926 · 冒頭
道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい速さで麓から私に向かって来た。
らしょうもん
羅生門 · 1915 · 冒頭
ある日の暮方の事である。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。
くものいと
蜘蛛の糸 · 1918 · 冒頭
ある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。
しおさい
潮騒 · 1954 · 冒頭
歌島は人口千四百、周囲一里に足りない小島である。島の形は、南北に走る脊梁山脈を抱いた楕円形で、最高点は神山の百二十五メートルである。
きんかくじ
金閣寺 · 1956 · 第一章
幼時から父は、私によく、金閣のことを語った。わが生れた土地は、若狭の東舞鶴から北へ二里、日本海に近い寒村で、子供の頃から私は、村の海岸へ出て、たえず寂しい日本海の海鳴りをきいていた。
はしれメロス
走れメロス · 1940 · 冒頭
メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。
にんげんしっかく
人間失格 · 1948 · 第一の手記
ずっと自分は、その人の笑顔を、美しいと思い続けてきた。